カウントダウンKAM適用 第6回 早期適用事例分析~新型コロナウイルス感染症

日本公認会計士協会 監査基準委員会副委員長 岡 良夫

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今回は2020年3月期決算においてKAMを早期適用した事例及び監査基準委員会研究資料第1号「「監査上の主要な検討事項」の早期適用事例分析レポート」を参考にしながら新型コロナウイルス感染症に関するKAMの事例分析を中心に解説します。

なお,文中意見にわたる部分は筆者個人の見解であり所属する組織の見解ではありません。

1.新型コロナウイルス感染症の企業の財務報告及び監査人の会計監査への影響

2019年に発生が確認された新型コロナウイルス感染症は中国から世界各国に感染が拡大し,各国政府により課された感染拡大防止目的の経済活動の制限等の規制により,各国の経済活動に多大なる影響を及ぼしました。新型コロナウイルス感染症は現時点で収束に至らず各国の経済活動への影響も依然として継続しています。当然,新型コロナウイルス感染症により個々の企業の活動も影響を受けており,それに伴い企業の財務報告及び監査人の会計監査に広範な影響を及す可能性が有り,以下に主要な項目を列挙致します。

(1)会計上の見積り

新型コロナウイルス感染症の影響に関してどのような仮定を置いて会計上の見積りを行うかにより企業の業績が大きく変動する可能性...