金利指標改革 IFRSの概要と実務対応のポイント

有限責任あずさ監査法人 公認会計士 新開 朋春

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はじめに

国際会計基準審議会(IASB)は,2020年8月27日,「金利指標改革‐フェーズ2(IFRS第9号,IAS第39号,IFRS第7号,IFRS第4号及びIFRS第16号の改訂)」(以下「本改訂」という。)を公表しました。本改訂は,有用な財務報告を提供する観点から,金利指標改革の結果としてLIBOR等の既存の金利指標が代替的な金利指標に置き換えられる際に,1.変動利付商品の参照金利等の契約条項の変更と2.ヘッジ会計について実務上の便法を定めています。本改訂により,IASBがフェーズ1とフェーズ2の2段階に分けて実施してきた金利指標改革に対応する基準改訂が完了しました。本稿では,企業が当該基準改訂を適用する際に生じ得る実務上の論点について,IFRSの概要を確認した上で,必要と考えられる対応事項を解説します。

なお,文中の意見に関する部分は筆者の私見であることを,あらかじめ申し添えます。

1.変動利付商品の参照金利等の契約条項の変更

本改訂は,償却原価で測定される金融資産及び金融負債並びに一部のリース契約を対象として,契約上のキャッシュ・フローの変化に対する実務上の便法を定めています。例えば...