英国FRCのレポートに基づくIFRS開示事例分析と実務上の論点(上)

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 岩田 英里子

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Ⅰ.はじめに

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下,IFRS第15号)は,2018年1月1日以降開始する事業年度から適用されており,日本で2021年4月から原則適用開始となる収益認識会計基準で参考になる実務も多いと考えられます。

英国・財務報告評議会(以下,FRC)は,2020年9月24日にIFRS第15号の適用後2年目となる企業の開示を総括し,改善点を示したレポート(以下,本レポート)を公表しました。本レポートでは,具体的な開示例を用いて不十分な事例とその改善点,そして好事例を示し,IFRS第15号で要求される開示についてポイントとなる点を整理しています。

本稿では,本レポートの主な内容について紹介します。

なお,本稿中の意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり,EY新日本有限責任監査法人の公式見解でないことを予め申し上げます。

Ⅱ.FRCレポートの分析対象

FRCは,2019年10月にIFRS第15号初度適用時における開示分析を実施しており,その際に最も懸念された事項に焦点を当て,本レポートは作成されています。企業によって提供されている情報が,財務諸表利用者の要求を十分に満た...