「開示検査事例集」(令和2年8月公表)について

証券取引等監視委員会事務局 開示検査課 課長補佐 亀岡 典之

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証券取引等監視委員会(以下「監視委」といいます。)は,令和2年8月7日,令和2事務年度版の開示検査事例集を公表しました。

開示検査事例集は,市場関係者の皆さんに適正な情報開示に向けた取組みを積極的に行っていただけるよう,毎年,監視委による開示検査の最近の取組みや,開示検査によって新たに判明した開示規制違反の内容,その背景・原因及び是正策等の概要を中心にご紹介しています。

本稿では,今回公表した開示検査事例集から,最新の課徴金納付命令勧告事例を中心にご紹介します。

なお,本稿中の意見にわたる部分は,筆者の個人的見解であることをあらかじめお断りします。

1.開示検査について

金融商品取引法における開示制度は,有価証券の発行・流通市場において,投資家が適切に投資判断を行うために,上場会社等が有価証券報告書等の開示書類を提供することによって,投資家保護を図ろうとする制度です。

このため,粉飾決算に代表される有価証券報告書の虚偽記載等をはじめ,上場会社等による開示規制違反が発生した場合には,投資家に不測の損害をもたらすだけでなく,その上場会社等自らの信用を失い,我が国証券市場の信頼を大きく失墜させることにつ...