書評 竹村 純也著『ダイアローグ・ディスクロージャー -KAMを利用して「経営者の有価証券報告書」へとシフトする-』

(同文館出版刊/本体2,200円+税)

Arithmer株式会社 常務取締役CFO 経営管理本部長 公認会計士 乾 隆一

( 43頁)

2020年3月期から,有価証券報告書の「経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」,いわゆるMD&Aの記述に,経営者の視点を反映することが求められるようになった。しかし,経営者視点に立った有価証券報告書とはどのように考えて作成すれば良いのか,未だに悩んでいる有価証券報告書作成者は多い。そのような有価証券報告書作成者の悩みを払拭する一助となるのが本書である。

監査報告書改革の一環として2018年の監査基準の改正で導入されたKAM(Key Audit Matters)は,財務諸表に注記として記載されたものの中から監査上の主要な検討事項を報告するものであり,監査報告書の読者である投資家は監査人がリスクと捉えた事項や重点的に監査資源を投下したであろう事項を把握することができ,結果,投資先の状況をより深く理解するのに役立つと言われている。

このKAMという監査人の報告をきっかけに有価証券報告書の開示を充実させていく,その具体的な考え方や進め方などを提案しているのが本書である。

本書は,第1章「経理部門の有価証券報告書」からの脱却,第2章 企業側が知っておくべきKAM制度,第3章...