時事談論 vol.94「監査先への非監査業務は青天井?」

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●監査人が監査先の株を持つこと

先日,公認会計士が制度で求められている研修単位を不正に取得していた事案が明らかになった。Web研修で複数同時「受講」により時間短縮を図ったようだが,研修内容を理解していないこと以上に,失う信用を取り戻すのに,どのくらいの時間がかかるのか,そもそもそれが可能なのか?ということに思いが至ってないことの方が問題だろう。

監査人が監査先の株を保有することについて,読者の方々はどう思われるか?「監査人も経営には一定の責任を持っているのだから,関与期間中は一定の株を持っている方が『自分事』として考えて良い」という意見もあるだろう。しかし,一般的には「株価が下がるようなことを明らかにせず,株価が上昇するようなことを後押しするだろう」という推測が大勢を占める。また,監査関与期間中,個人の財産である株式の処分を禁止すれば,それはそれで問題がある。だから,監査先の株は持ってはいけない,となる。変な疑いをかけられるなら,持ってない方がマシだ,とも言える。冤罪を立証するのは困難だし,失った信用は回復できない。

監査は公認会計士の独占業務である代わりに,監査を行う公認会計士に対しては個...