売上不正リスクへの対応
監査法人アヴァンティア 公認会計士 加藤 建史
( 28頁)
1 はじめに
現代の監査においては,売上には不正リスクが存在するものと推定して手続を実施することが求められる。しかし,多くの監査チームが想定している不正シナリオは,いくつも考えられる不正のごく一部のパターンに(相当大胆だと思われるが)絞り込んでいる。
また,実施している手続の内容も不正の発見に直結しない分析と形だけのバウチングのように思える。「監査基準委員会報告書に書いてあるから不正リスクありにしているけど,うちのクライアントで不正なんてないよ。」と考えているのが透けて見えるかのようなのだ。
そこで本稿では,不正シナリオをどのように想定すべきか,不正を発見するためにどのような手続を実施すべきなのかを検討したい。
2 現在設定されている不正シナリオ
現在,多くのチームが採用している不正シナリオは,「粗利率が高い架空売上の可能性に着目する」「2月累計で予算未達かつ,3月中に予算を達成した事業部の架空売上の可能性に着目する」などのように,「絞り込んで」不正を想定している。
しかし,不正を実行する側の立場に立てば,「不正を実行する際には,粗利率があまり高くならないようにしよう。目立ちたくないから」「期末の...
- 経営財務データベースで続きを読む
-
無料 2週間のお試しはこちら
すぐに使えるIDをメールでお送りします