IASBディスカッション・ペーパー「企業結合‐開示,のれん及び減損」に提出されたコメントの動向の分析(上)

~のれん及び減損Ⅰ~

同志社大学 商学部・商学研究科 客員教授,元パナソニック株式会社 理事  山田 浩史

( 36頁)

1.はじめに

国際会計基準審議会(IASB)は2020年3月19日にディスカッション・ペーパー「企業結合‐開示,のれん及び減損」(以下「本DP」)を公表した。IASBはIFRS第3号「企業結合」の適用後レビュー(PIR)において認識された論点を考慮して,のれん及び減損に関するリサーチ・プロジェクトを進めてきた。PIRでは,特に,現行の減損のみモデルの下で,のれんの減損の認識が少なく,遅すぎる(Too Little Too Late)という課題が多くの利害関係者から指摘されている。PIRで具体的に識別された論点は,(a)取得に関する情報の開示,(b)のれんの減損テストの有効性とコスト,(c)のれんの償却を再導入すべきかどうか,(d)無形資産とのれんの区分認識,である。本DPはこれらの論点についてのIASBの予備的見解を示している。

コメント提出の期限は,当初は2020年9月15日であったが,新型コロナウイルス(Covid-19)パンデミックのため,2020年12月31日に延長された。本稿の執筆時点で,193件のコメントがIASBに提出されている①。そのうち個人(22件)及び大学生(24件)か...