<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第34回 マテリアリティ(その3)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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張為国氏の反対意見

IASBがIFRS第16号「リース」の公表を決議した際に,反対票は1票だけだった。その反対票を投じたのは中国出身のIASB理事だった張為国氏である。IFRS第16号に少額資産リースについての免除規定が入っていることが,彼の反対理由の1つであった。IFRS第16号「リース」では,「認識の免除」として原資産が少額であるリースを示しており,結論の根拠で,新品時に5千米ドル以下という規模の価値の原資産のリースを念頭に置いていたと記載されている。これに対し張氏は,「少額資産のリースが総額で重要性がある場合には,資産及び負債を認識することに大きな便益がある」と指摘している。張氏とは個人的にも何度も議論したが,重要性の判断は数値基準のような機械的なもので判断すべきではなく,全体の文脈の中で判断されるべきものだという彼の信念はクリアだった。

実はIFRS第16号は,少額資産の免除金額を累計した総額に重要性があった場合でも,累計総額をオンバランスすることを求めていない。そのことは,IFRS第16号のB4項で明確にされている。「原資産が少額であるのかどうかの評価は,絶対値ベースで行われる。...