Q&Aコーナー 気になる論点(290) SPAC(特別買収目的会社)

‐発行したワラントの会計処理‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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2021年5月3日の日本経済新聞朝刊では,米国証券取引委員会(SEC)による監視強化を背景に,特別買収目的会社(SPAC)の勢いに急ブレーキがかかったとしており,これには,SPACが発行するワラントの会計処理も関係しているとしています。どのように関係しているのでしょうか。

SECが2021年4月12日に公表した声明では,従来,多くのSPACがワラントを資本として処理していましたが,負債と見なさなければならないケースがあるとし,その場合には,公正価値で評価し,評価差額を当期純利益に反映することになります。このため,会計処理を見直したり赤字が拡大したりしたために,SPACを利用した取引が減少しているようです。

<解説>

背景

SPAC(Special Purpose Acquisition Company)は,未上場企業の買収を目的とし,事業の実体や事業計画を持たないシェルカンパニーであるため,「空箱」「ブランク・チェック・カンパニー」(白紙小切手会社)とも呼ばれています。

すなわち,SPACは,自身の新規株式公開(IPO)で得た資金など限定的な資産しか有していませんが,その後,対象企業(ターゲ...