会計知識録 第16回 知っているようでよく知らない「引当金」の本質とは?
公認会計士 溝口 聖規
( 32頁)
筆者は経営大学院で会計を教えていますが,学生から『引当金』の具体的な意義や会計処理についてよく質問を受けます。また,経営者の方からは,引当金は現金の出入りが生じていない段階で会計処理が必要となり,経営現場の感覚からズレるため理解しにくいという意見も耳にします。
今回は,引当金の意義や会計処理,表示について説明します。また,引当金と資産除去債務,積立金などとの違いにも触れたいと思います。
引当金とは
『在庫を引き当てる』という表現を聞いたことがあるでしょうか。在庫を引き当てるとは,得意先からの注文に対して,在庫の有無をチェックし,得意先へ在庫を割り当て出荷の準備をすることを言います。つまり,「引き当てる」とは「準備をする」ということであり,未だ事態は起こってはいないが,それに備える,という意味になります。
引当金の要件
会計では,以下の4つの要件を満たすと『引当金』の計上が必要になります。
<引当金の要件>
① 将来の特定の費用または損失であること
② 将来の費用(損失)の原因が既に発生している ③ 将来の費用(損失)の発生の可能性が高い ④ 将来の費用(損失)の金額を合理的に見積もることができる |
引当金の要...
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