IFRSをめぐる動向 第133回 「基本財務諸表」プロジェクトの最近の動向(2021年3月~6月IASB会議での再審議)

PwCあらた有限責任監査法人 米国公認会計士 村山 華

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Ⅰ.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,財務諸表における情報の伝え方の改善として,特に損益計算書に焦点を当てた基準開発が進められている「基本財務諸表」プロジェクトの動向について紹介します。IASBは,2019年12月公表の公開草案「全般的な表示及び開示」に対するフィードバックを受けて,2021年3月より再審議を行っています。本稿では,2021年3月から6月までのIASB会議で討議された内容を中心に説明します。なお,本稿の内容は今後のIASBの討議状況によって変更される可能性があり,また文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

Ⅱ.主な論点と再審議の状況

IASBは,「基本財務諸表」プロジェクトにおいて,さまざまな提案を行っており,再審議にあたっては,公開草案に寄せられたフィードバックの結果と共に,プロジェクトの目的と焦点,論点間の連携,適時性,および効率性という4つの要素を考慮し,論点を大きく2つに分けています。①全般的に支持されている論点は...