監査を巡る英国の状況と日本企業への影響②

PwCあらた有限責任監査法人 アシュアランス・マネジメント・オフィス シニアマネージャー 飯沼 篤史
PwCあらた基礎研究所 所長 山口 峰男

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1.はじめに

2018年1月の英国カリリオン社破綻に代表される社会的に影響の大きな企業における不正会計の頻発を契機として,英国内では議会主導による監査改革の議論が行われています。議論開始以来,COVID19やBrexitといったさらなる難題が本件の進捗を妨げている点は否定できませんが,そうした状況下でも引き続き議会・規制当局・監査事務所・企業・投資家・メディアなど,幅広い利害関係者を巻き込み,監査制度に関する議論が続けられています。筆者は,2019年5月に,本誌にて議論の概要をご紹介しました

本稿では,本稿執筆時点(2021年5月末日)での公表資料や報道内容をもとに,前回寄稿時からの議論の進展を時系列に沿って,可能な限り客観的に整理します。また,現時点で予測しうる,在英日系企業への影響も考察します。

なお,文中の意見にあたる部分は筆者の私見であり,PwCあらた有限責任監査法人の正式見解ではないことを予めお断りします。

2.議論の経緯と全体像

(1) 改革の経緯

前稿から2021年5月末までの2年あまりの主な動きを時系列で示すと,図表1のとおりになります。全体として,議会・有識者・専門機関による...