<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第41回 基本財務諸表(その5)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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持分法よ,どこへ行く

持分法は便利な会計処理である。他人の褌で相撲を取るという言葉があるが,持分法では,他人の会社の利益の一部を自分の会社の利益として計上できるのだ。これが一行連結と表現されるように,持分法は連結決算の1つの手法であると理解されている。

ただ,持分法により取り込んだ持分法損益を財務諸表のどこに表示するのかは,企業によって様々である。持分法損益は,関連会社や共同支配企業の税引後利益の持分である。また,連結の手法として利益を付け加えるだけなので,財務諸表の税引後利益のさらに下に表示すべきという考え方もあれば,それらの会社は親会社と一体となって運営しているのであるから,営業利益に組み込むべきだという考え方もある。このような持分法の表示のばらつきが,財務諸表の比較可能性を損なってきたので,持分法の表示場所を特定するというのも,この基本財務諸表プロジェクトの1つの目的であった。

持分法損益の表示場所の1つのアイデアが投資区分を創設して,全ての持分法損益はその区分に表示してはどうかというものであった。他に資産の運用損益を財務損益と区別すべきという議論もあったので,投資区分を新たに設けて,...