ハーフタイム コロナ関連の政府特別融資~中小企業金融と会計の問題点~

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全産業の長短借入金は,直近ではバブル崩壊から21年ぶりの高水準に達し,そのうち資本金が1千~2千万円の中小企業は2.6倍に膨らんだ(21年9月2日付日本経済新聞)。

中小企業の借金が急増したのは主に政府保証付きあるいは利子補給付きのコロナ関連特別融資であるが,東京商工リサーチ(以下TSR)の「特別寄稿 どのような企業がコロナ支援策を受けたのか?」(星岳雄・東京大学大学院教授/川口大司・東京大学大学院教授/植田健一・東京大学大学院教授 21年5月26日付)によると,①TSR評点の低い企業の方が特別融資を申し込む比率も承認される確率も高い,②政府保証付き融資には迅速な融資実行が求められていたこともあり民間金融機関の貸付の際の審査は厳しくなかった,③迅速な融資実行は,"元々経営状態が悪かった企業"への支援策となる傾向がみられた。

また,星教授は「ゾンビ企業より労働者守れ」と主張する(21年5月13日付日本経済新聞『経済教室』)。以下で,中小企業向け金融と会計の実態と今後のあり方を考える上で留意すべき課題を簡単に整理してみたい。

懸念されるのは何といっても③である。"元々経営状態が悪かった企業"が星...