【投資家が求める開示】企業分析の視点からみたIFRS財務諸表 第10回 無形資産と財務諸表

~利益の源泉はシェフかレシピか?~

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

( 12頁)

筆者らは投資家等情報利用者を中心に自主的に集まり,IFRS財務諸表の課題について議論するワークショップを年3~4回開催している。このワークショップは,特定の資格や特定の業種に属するメンバーだけの集まりではないという点と,会計基準ではなくむしろ開示の問題を議論するという点が特徴となっている。毎回のテーマは参加者の希望により決めている。最近のテーマはIFRSに直接関連するものにとどまらず,国際的に注目されている開示の論点や動向,今後を見据えた内容へと広がりを見せている。そして今回はIFRSと非財務の接点となるテーマで議論した。

1.アジェンダ・コンサルテーション2021

今年,IASB(国際会計基準審議会)は5年ぶりのアジェンダ・コンサルテーションに取り組んでいる。これで3回目となるが,今後IASBが取り上げるべきトピックについて関係者の意見を募るのが"アジェンダ・コンサルテーション"だ。2021年3月に発表された文章には22個のアジェンダ候補が掲載され,意見の締め切りは9月27日になっている。

一方,IASBを傘下に置くIFRS財団は,新しいサステナビリティ報告の基準を作る,サステナビリティ・...