ハーフタイム 大企業の中小企業化と経理部門の子会社化について

  

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企業は人間が作る組織の一つであるから,様々な規模と性格の企業があって当然である。中小企業が成長して大企業になる例は珍しくなく,町工場が世界企業に発展すればサクセスストーリーとなる。逆に大企業が中小企業化する例もある。コロナ禍で赤字体質化した大企業が資本金を減らして中小企業になるのは税負担減が目的だが,以下で注目するケースは,“モノからコト,サービス中心へ”と産業構造の変化に対応するための中小企業化,しかも経理部門の子会社化(低賃金化)を伴うダウンサイジングである。

複雑な部品を組み合わせるエンジン式自動車から,車体構造がシンプルで部品も少ない電気自動車(EV)へと転換すると,長大な組立ラインやコンベアベルトを必要とする大規模組織よりも中小企業の方が効率的になる。つまり同一種大量生産時代には大メーカーは有利だったが多品種少数生産時代には中小企業のほうが効率的になるからだ(丹羽宇一郎『会社がなくなる!』講談社現代新書)。

この発想は,自動車産業のみならずその他産業にあっても,とくにESG/SDGsを推進中の企業にあっては,“脱「大量生産・消費・廃棄」”を通じて循環型経済に対応するうえでも,労働...