IFRSをめぐる動向 第144回 IFRS実務記述書第1号「経営者による説明」プロジェクトの動向

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 浅井 麻菜

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Ⅰ.はじめに

本連載は、主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき、IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は、IFRS実務記述書(Practice Statement)第1号「経営者による説明」(Management Commentary)(以下「PS第1号」という。)の改訂プロジェクトの動向について説明します。本プロジェクトは、2010年に公表された現行のPS第1号に代わる、投資者及び債権者の情報ニーズに焦点を当てた包括的な要求事項を開発するものであり、IASBは2021年5月に公開草案を公表しました。本稿では、公開草案の主な内容を振り返るとともに、2022年3月・4月開催のIASB月次会議で討議された公開草案に対するフィードバックについて紹介します。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

Ⅱ.公開草案の概要

経営者による説明とは、企業の財務諸表を補完する報告書であり、企業が価値を創出しキャッシュ・フローを生み出す能力についての経営者の洞察を提供するものとされています。経営者による説明は、「経営者によ...