我が国の四半期開示の見直しの課題と論点〈後編〉

四半期開示の現状と四半期決算短信への一本化の具体的な課題について

同志社大学商学部・商学研究科 客員教授・元パナソニック株式会社 理事 山田浩史

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本稿では、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(以下「DWG」)で2019年9月から検討が進められてきた四半期開示の見直しの課題と論点について、〈前編〉( No.3563、2022年7月11日号 )に引き続き、考察している。〈後編〉では、(a)四半期決算短信への一本化の具体的な課題の検討、(b)我が国の四半期開示の見直しの抜本的な対応、(c)適時開示と業績予想、を取り扱いたい。

なお、本稿の意見にわたる部分は筆者の私見である。

6.四半期決算短信への一本化の具体的な課題の検討

2022年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(以下「DWG報告」)では、法令上(金融商品取引法)の四半期報告書を廃止し、取引所の規則に基づく四半期決算短信に一本化する方向性が示された。これは、四半期決算短信の公表時点で、投資家とのコミュニケーションがほとんど終了しており、その後に公表される四半期報告書がほとんど注目されない現状を踏まえれば、妥当な判断であると評価できる。これによって、四半期決算短信と四半期報告書の2つを作成するという重複業務が削減され、財務諸表作成者(以下「作成...