<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第66回 Goodwillと無形資産(1)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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Goodwill

Goodwillという言葉の本来の意味を辞書でひいてみると、好意や、善意、誠意、親切といった表現が並ぶ。Goodwillは、相手に対しての好意や友好的な感情(通常は恋愛感情を除く)を表現する言葉で、国際親善などに用いられる言葉である。さらにそれが発展し、交渉において、こちら側の誠意や善意を交渉相手先に示す場合や、今後のお付き合いのためにこちら側の気持ちを示すような場合に使われる。

一方で、Goodwillという言葉には会計専門用語としての「のれん」という意味がある。会計に携わる我々の間では、こちらの意味で使用することが圧倒的であり、前者の意味でGoodwillという言葉を使用することは、日常あまりない。しかし、いつも不思議に思うのは、Goodwillという言葉と、のれんという言葉が結びつかないことだ。日本で使用されるのれんの意味は、説明不要であるが、老舗の店先にぶら下げる暖簾から派生している。暖簾には店の屋号や店の家紋が印刷されており、その暖簾をぶら下げることが、その店の商標を掲げていることを意味した。そのため、そもそも日本語の暖簾という言葉には、物理的な暖簾を表す意味と...