ESGと経営財務 第2回 ESG経営の動向とステークホルダー主義

京都大学経営管理大学院・経済学部 教授 砂川伸幸
京都大学経営管理大学院 博士課程・経営科学専攻 京大オリジナル株式会社 ソリューション・デザイン部 シニアコンサルタント 岡田一郎

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1.ESG経営とステークホルダー主義の潮流

企業は、自社の経営資源を経営環境に適合させることで、利益やフリー・キャッシュ・フロー(FCF)を生み出すことができる。経営環境としてESGを認識する必要性が高まっていることは、コーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改正箇所や代表的な機関投資家である生命保険協会の提言内容の変化からも明らかである。確認しておこう。

前回( No.3574・12頁 )も取り上げたが、2021年度に改訂されたCGコード(東京証券取引所、2021)の基本原則2は、次の考え方を追加している。

「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連サミットで採択され、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同機関数が増加するなど、中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)が重要な経営課題であるとの意識が高まっている。こうした中、我が国企業においては、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を一層進めていくことが重要である。上場会社が、こうした認識を踏まえて適切な対応を行うことは、社会・経済全体に利益を及ぼすとともに、その結果と...