ESGと経営財務 第3回 ESGと財務パフォーマンス ─環境要因と経営財務─

京都大学経営管理大学院・経済学部 教授 砂川 伸幸
京都大学経営管理大学院 博士課程・経営科学専攻 京大オリジナル株式会社 ソリューション・デザイン部 シニアコンサルタント 岡田 一郎
中京大学経営学部准教授 京都大学経営管理大学院 客員准教授 加藤 政仁

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1.ステークホルダー仮説への期待

本連載の第2回( No.3576・16頁 )で説明したように、ESG活動やESG経営が、多様なステークホルダーとの協働によって、財務パフォーマンス(CFP、Corporate Financial Performance)に良い影響を与えるという考え方は、ステークホルダー仮説と呼ばれる。ESG経営が、ステークホルダーとの関係を通じて、企業のCFPに良い影響を与える要因は様々であるが、次のような説が示されている。

一般的に、ESGパフォーマンス(ESGP、ESG Performance)が高い企業は、ステークホルダーにとって魅力的である。環境志向が強い顧客は、環境スコアが高い企業の製品やサービスを好む。そのような製品やサービスを提供する企業の収益は、向上するであろう。気候変動リスクが大きくなり、脱炭素が社会的な課題になると、サプライチェーンにおけるCO2排出量(Scope3)を削減することが、企業のCFPを高めたり、悪化を防いだりすることになる。CO2削減に取り組まない企業は、サプライチェーンから排除され、事業活動の縮小や停止を余儀なくされる可能性がある。

ESGを...