会計知識録 第25回 持ち合い株式は何が問題なのか?

~政策保有株式を巡る新たな動き~

 公認会計士 溝口 聖規

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政策保有株式とは

政策保有株式は、持ち合い株式ともいわれ、1960年代頃から広まった我が国特有の株式保有の仕組みです。企業間で相互に株式を持ち合う場合が多いですが、どちらか一方の企業だけが他社の株式を保有する場合もあります。貸借対照表上では、政策保有株式は通常、固定資産の「投資その他の資産」の区分に「投資有価証券」として計上されます。上場会社の株式など時価のある株式の場合は、決算期末に時価評価され、時価と取得価額との差額は(税効果を控除の上)純資産の部に「その他有価証券評価差額金」として計上されます。

持ち合い株式は、高度経済成長においては敵対的買収の防止や経営の安定化など一定の役割を果たしましたが、一方で、資本の空洞化や安定株主工作による株主総会の形骸化といった問題が指摘されてきました。その後、バブル経済が崩壊し、会計基準に徐々に時価会計が取り込まれるようになると、持ち合い株式の解消が進みました。持ち合い株式を時価評価して取得価額との差額を決算に反映する必要が生じると、業績の悪い会社の株式を保有することは自社の決算に悪影響を及ぼすようになったためです。また、外国人投資家の存在感が高まるよ...