ハーフタイム リスキリングは誰にとって緊急課題か

( 44頁)

去る10月3日、岸田首相は所信演説で「成長分野へ移動する個人のリスキリングに5年間に1兆円」を投じると表明した。ただ指針は23年6月までに取りまとめる予定という。声明自体は人的資本投資を加速させる点で大変好ましいが、具体的指針は9か月先になるのは寂しい。米主要企業における企業価値に占める無形資産の割合はすでに90%(日本では32%)に達しており、人材価値の開示を求める動きが世界各地で活発化すると、社員のリスキリング(学び直し)は開示の中心となり企業選別はグローバルに進むからである。

だがここで強調したいのは、リスキリングは本来的には経済の心臓である企業がまずやるべきだし、その企業を動かす社員が率先して自発的に受けるべきということ。DXの専門人材は世界中で引く手あまたなのにわが国は鎖国状態だから、これは緊急課題である。

ちなみにドイツの自動車部品メーカー・ボッシュ社は、世界40万人の全社員を対象とするリスキリングに今後10年で約2,830億円を投じると発表。同時に社内におけるEV技術者養成とソフトウエア技術者養成コースのほか、社外との共同コースではデータサイエンティスト養成も行うなど、それぞ...