ハーフタイム 無形財産の特徴と課題

( 44頁)

無形資産には企業が永年に亘って築いてきた暖簾(のれん)も含まれるが、最近のイノベーションの中核は知的財産であり、そのまた中核は人的資本である。それらは従来の産業資本に代わる華やかさをもつが経営と会計に及ぼす課題も多々ある。以下ではJ・ハスケル&S・ウェストレイク (『Capitalism without Capital』2018)が指摘する特徴を4つ(①~④)とわれわれが日常的に観察できる特徴も4つ(⑤~⑧)、さらに各特徴から生まれる経営上あるいは会計上の課題もそれぞれ指摘する。

①Sunk Cost (支出額の埋没性):無形資産会計には「自己創設のれん禁止の原則」があり、R&D(研究開発)への支出は資産化されないから資金調達時の担保とならず単独売却も困難。なお、価値の計測法が確立されていないため、非財務情報で補足する必要がある。

②Scalability(規模拡張の可能性):応用する規模を拡張しても価値は減少しない。何度も何度も同時に複数の場所で使えるから一時的には独占体制を築ける。

③Spillovers(コピーされ易い):特許権として予防しないかぎり競合他社に波及する。ある生産者が優位...