<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第72回 Goodwillと無形資産(7)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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ただほど高いものはない

ただほど高いものはないという格言は、ただで何かをもらったり、良くしていただいたりすると、負い目を感じることになってしまい、後で面倒なことになるということを指摘したものである。適切な料金を適切なタイミングできちんとお支払いするのが一番良いということらしい。

携帯電話が出現した当初、携帯電話端末の本体代金が、実質0円というキャンペーンが多くあった。もちろん本当に携帯電話端末が無料になるわけではない。すべて後で支払いをする通話料金に上乗せされているだけのことだ。端末代金を無料にする狙いは、顧客の囲い込みである。携帯電話などの通信サービスの場合、電話番号などを一度決めて、使い始めれば、変更しづらくなる。そこでキャリア各社は、端末代金を無料にする代わりに2年間などのキャンセル不可の期間を設けて、顧客の固定化を競い合った。

現在はこのような販売方法は禁止されているが、悪いことばかりではなかった。端末代金を無料にしたことで、携帯電話は非常に早く普及した。携帯電話は使ってみたいが、端末代金が何万円もするとなると、二の足を踏んでしまう。でも端末代金が無料となると、ちょっと使ってみようか...