IFRSをめぐる動向 第149回 IFRS第9号「金融商品」の分類及び測定に関する適用後レビュー

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 宮治 哲司

( 56頁)

1.はじめに

本連載は、主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議における討議内容に基づき、IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。IASBは、IFRS第9号「金融商品」(以下「IFRS第9号」といいます)における分類及び測定の要求事項に関する適用後レビュー(以下「PIR 」といいます)について、2019年9月に公表された情報要請「IFRS第9号の適用後レビュー ― 分類及び測定」(以下「情報要請」といいます)に寄せられたフィードバックに対応し、2022年3月より開始された再審議の結論として、2022年12月にフィードバック・ステートメントを公表しました。本稿では、フィードバック・ステートメントの概要及びフィードバック・ステートメントで取り上げられた事項のうち、主な内容に対する検討の状況を紹介します。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

2.背景

IASBは、IFRS基準の開発に係るデュー・プロセスの一環として、新基準又は既存の基準の大規模な修正について少なくとも2年間適用された後にPIRを行うこととしています。PIRは、次の2つの...