<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第77回 保険とIFRS会計基準(3)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

( 42頁)

日本食デリバティブ

日本食が世界的に認知されるに伴い、カリフォルニア・ロールやホタテマヨネーズなど、本来日本食にはなかったメニューが一般化するようになった。これら日本食から派生したメニューを指して、日本食デリバティブと言った人がいる。ただ、それはその人が勝手に言っていただけで、まわりはその人が日本食のデリバリーの話をしていると勘違いしていて話が合わなかったそうである。デリバティブの本来の意味は派生物ということなので、どんなものにもデリバティブはある。したがい日本食デリバティブという言葉も間違った表現ではないのだろうが、一般的には、デリバティブという言葉はオプションやスワップなどの金融派生商品のことを限定的に指すので、話が合わないのも当然である。

保険の原点がギリシャ時代の冒険貸借という高利の貸付金取引で、それがグレゴリウス9世による利息禁止令をきっかけに、貸付金と保険が切り離されたという経緯を考えると、保険もデリバティブである。しかし、保険はデリバティブとは区別して扱われている。保険が単なるデリバティブの一種であるならば、IFRS第17号「保険契約」はいらない。デリバティブならば、IFRS...