ハーフタイム M&Aにおけるシナジーとプレミアムの関係

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「M&A税務 370億円申告漏れ」というトップ記事(1月25日付、日本経済新聞)は、今年こそ海外企業の買収をと目論んでいた企業、とくに手元資金が潤沢でシナジー(事業規模や範囲の拡大のほか、両者が持つノウハウを組み合わせたときに"2+2=5"となる相乗効果)で急速成長したい企業にとっては、プレミアム(買収対価の追加払い)とのリスキーな関係を知る恰好の事例となる。とはいうものの、新聞記事から知り得る事実はごく僅かだから、以下はIFRS会計の実務と経営戦略の話に限定される。

本件の争点は、関連支出370億円は"費用か資産か"である。周知のように取得した純資産はすべて公正価値測定の対象だから、買収対価と純資産額も単純差額イコール「のれん」ではない。単純差額から不純物を取り除いた残額が"コアのれん"となる。

第1の不純物は、被買収先の簿外分を含むすべての資産負債を徹底的に洗い出すためのデューデリジェンス費用(記事によると大型案件では数億円や数十億円規模になることもあるという)だ。M&Aを成功させるには不可欠であるが、公正価値重視のIFRSでは単なる費用である。のれんは個別に売買できない識別不能な資産...