<INTERVIEW>素直な心で項目選定を~3年目のKAMに期待すること~ 公認会計士 住田 清芽氏

( 08頁)
 公認会計士 住田 清芽

〈編集部より〉

「監査上の主要な検討事項」(KAM)は強制適用からまもなく3年目を迎えようとしている。より良いKAMのためには何が必要なのか、日本公認会計士協会(JICPA)の常務理事在任時、導入に携わった住田清芽氏に聞いた。

1.実務に定着してきたKAM

―まずは、2年目までのKAMの総括からお聞かせください。

監査のプロセスにKAMがきちんと定着してきたのを感じます。現在、上場会社3社の社外役員を務めていますが、いずれの会社の監査チームも監査計画に「KAMに関するコミュニケーション」を組み込んでいます。「KAMについていつ、どのようなコミュニケーションをするか」をあらかじめ決めておくだけではなく、監査期間の早い時期に前期のKAMを踏まえた当期のKAM候補が提示されます。そして、期が進むにつれてそれらの候補に関する状況変化も説明されます。

同様のコミュニケーションは企業の執行側とも行われており、財務諸表の作成および監査プロセスにKAMが組み込まれていることと思います。

―監査人だけでなく、企業側にもKAMは定着してきているでしょうか。

そうですね。取締役会で、四半期レビューの結果の報告と併せてKAM候補について説明されることがありますが、企業側も自然にその報告を受け止めている様子です。

2.難しい論点でなくてもKAMになる

―本誌調査( No.3565・4頁 )では、2年目のKAMも1個の企業が最多でした。この点はどう評価しますか。

1年目に続き2年目も1個のケースが最多だったのを見ると、少ない個数で安定してしまった感があり、残念に思います。企業の規模(売上高)に比例して個数が増えるとの集計結果もありましたが、売上高1兆円以上でもKAMが1個しか選ばれなかった企業もあり、「本当にそんなにビジネスがシンプルなのか」と疑問に思いました。個数が多ければ多いほど良いというわけではありませんが、絞り込みすぎている印象です。

―全体として個数が少なくなってしまった理由はどこにあるのでしょうか。

監査人も企業の執行側も、「監査上の難しい論点しかKAMにならない」という意識を持ってしまっているからではないかと思います。

監査の実務では、判断に迷って法人の審査部門を巻き込んで審査を重ねるような論点が出てくることは多くありません。通常は、会計基準に則って会計処理されているかを粛々と追いかけて...