「監査上の主要な検討事項(KAM)」の情報価値
関西大学大学院 教授 松本 祥尚
青山学院大学大学院 教授 町田 祥弘
1.はじめに
2018年に改訂された監査基準で上場会社等の監査に導入された「監査上の主要な検討事項」(Key Audit Matters:以下、KAM)も、2023年3月決算をもって2020年3月期の早期適用を含め4年が経過しようとしている。KAMは、監査人が当年度の財務諸表の監査において特に重要であると判断した事項であり、監査役等と協議したうちから監査人の判断で抽出され監査報告書に記載される項目である。またその目的は、監査人が実施した監査の透明性を高め監査報告書の情報価値を高めることに求められる。このKAMの導入により、標準様式の短文式監査報告書が1947年のアメリカ会計士協会(以下、AIA)による「監査基準試案」及びわが国の1956年監査基準で導入されて以来、監査意見以外で監査人が監査に係わるオリジナルかつ情報価値のある情報を初めて読者に提供する機会を得たことになる ① 。KAMの記載区分に記載される項目は、以下の3つである。
・KAMの内容
・当該事項をKAMと判断した理由
・当該事項に対する監査上の対応
このKAMについて、我々は、監査人と監査報告書の想定利用者であるアナリストに対してアンケ...
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