<2023年3月期決算>KAMの特徴的な事例と記載のポイント(前編)

金融庁 企画市場局 企業開示課 課長補佐 鹿子木慎亮
 企業会計専門官 清野 恭平
 係長 澤村 泰行

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1.はじめに

監査上の主要な検討事項(以下「KAM」)は、2018年7月に公表された「監査基準の改訂に関する意見書」により日本の監査実務に導入され、2021年3月期から、一部を除く金融商品取引法監査が適用される会社に対して本適用され、監査報告書への記載が求められています。監査報告書におけるKAMの記載は、監査人が実施した監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高めることにその意義があり、KAMを契機として利用者と経営者との対話がより促進されること等が期待されています。

金融庁では、KAMの更なる実務の定着と浸透を図ることを目的として、昨年に引き続き、学者、投資家、アナリスト、関係団体等を参加者とする「KAMに関する勉強会」を開催し、勉強会で議論した特徴的な事例や記載に当たってのポイントを取りまとめた「監査上の主要な検討事項(KAM)の特徴的な事例と記載のポイント2022」(以下「事例集2022」)を公表しています。

KAMの本適用2年目となる2022年3月期においても、企業とのコミュニケーションを踏まえた監査人による創意工夫のもと、様々なKAMの記載が見られた一方、KAMのボイラープレ...