<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第83回 保険とIFRS会計基準(9)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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使い捨て

「使い捨て」という言葉が頻繁に使われるようになったのは、大阪万博が開催された1970年代以降だという。その頃から徐々にスーパーマーケットでポリ袋が利用されるようになり、高級ライターは使い捨てライターにとって代わられ、ついにはレンズ付きフィルムという名の使い捨てカメラまで登場した。使い捨て文化は高度経済成長を後押しし、豊かさの象徴となった。

一方、人間は豊かになるとその豊かさを守りたいと思うようになる。その人間心理によって保険契約の契約残高も伸びていった。1970年代の後半から、バブル期ピークの1990年代初頭にかけて、日本の生命保険会社の保険料収入は数倍となる勢いで増えた。しかし保険料収入が増えたと言っても、増えたのは主に貯蓄型保険であると思われる。

保険商品の開発がすすみ、保険契約者が死亡したらこれだけの保険金を支払いますという純粋な保険だけではなく、支払った保険金が無駄にならずに、満期時に満期保険金あるいは年金として受け取れ、また解約した際にも払った保険料の一部ないしは大部分が返戻されるような保険商品が主流となっていく。

満期保険金や解約返戻金のない純粋な保険は、事故が無ければ支...