書評 谷口 義幸著『要説 金融商品取引法開示制度』

(税務研究会/11,000円(税込))

大和総研 常務理事 池田 唯一

( 17頁)

今世紀に入り、金融商品取引法(およびその前身である証券取引法)は、金融関連法規の中で最も頻繁に改正が行われた法律と言ってよいだろう。これは、金融証券市場を取り巻くこの間の目まぐるしい環境変化に対応しながら、「貯蓄から投資へ」との大きな政策的な流れの中で、投資家の保護や金融証券市場の円滑な機能発揮を図ったものとして理解することができる。しかし、改正が繰り返された結果、金融商品取引法および関係法令の条文が極めて複雑になってしまっていることも事実である。その点は、同法に基づく開示制度についても例外でなく、開示制度の専門家の中にも、絶えず条文の読み違いの恐怖に駆られているという人が少なくないだろう。

このため、開示の制度や法令条文について、その趣旨や内容の詳細、立案担当者の意図などを正確に記述する解説書の存在が貴重になってくる。そうした文献としては、前世紀の終わりである1997年に当時の行政担当者たちが関与する形で開示制度の解説書が発刊され、それが2001年に改訂されているが、残念ながら、それらはその後の累次の法令改正の内容を反映したものとはなっていない。このため、最新の内容を反映した書籍の刊行...