Special Interview 中村直人弁護士に聞く 令和5年株主総会の留意点

 弁護士 中村 直人

( 12頁)

令和5年の株主総会におけるコロナ対応について、留意すべきことを教えて下さい。

新型コロナウイルス感染症の拡大は収束傾向にあり、経済活動は平常化しつつあります。マスクの着用は個人の判断に委ねられ、感染症法上の分類も五類に引き下げられたという状況を踏まえますと、株主総会の運営に関しても「脱コロナ」を進めていくことになります。この「脱コロナ」は、コロナ禍以前の実務に全てを戻すということではありません。コロナ禍の総会では、株主への情報提供が拡充し、運営の効率化も図られるなど良い変化もありましたので、そのような点は継続していくべきです。「脱コロナ」では、本来実施すべきであったが、コロナ禍により実施できなかったことを復活させるということです。

具体的には、来場を控える旨の要請を招集通知に記載することや、来場者数を制限すること、役員にリモートで出席させることは取りやめるのが望ましいです。3月総会でもそのような取扱いをする会社は減っています。また、マスク着用の要請についても、特段のアナウンスをせず、株主の自主性に任せるという対応も考えられます。マスク着用を要請した場合でも、要請に従わないことを理由に入場させないとか、退場させるということはリスクがありますので、極力避けるべきです。

また、来場者数がコロナ禍前の状況に戻る可能性もありますので、十分な座席数を確保する必要があります。会社として、合理的な推測に基づき準備した会場のキャパシティを超える数の株主が出席を希望してきた場合で、その全員を出席させるための代替策がないようなときには、会場のキャパシティを超えた株主の出席を断ったとしても直ちに違法とされるわけではないと考えられますが、座席配置の工夫や立ち見の許容、簡易的な第二会場(音声が聞こえ、かつ、質問希望があった際には本会場に誘導できる体制を整えておく)の設営など、実務上合理的に対応できる代替策については予め検討しておく必要があります。

シナリオもコロナ禍以前のものに徐々に戻されているようです。多くの株主が関心を持つ重要事項に関する事業報告の説明や質疑応答の時間は十分に確保すべきです。他方で、たとえば、特に指摘事項のない場合の監査報告などコロナ禍以前は慣習としてなされていた形式的な説明事項については、省略したままとすることで宜しいのではないでしょうか。

コロナ禍の総会では、事前の情報提供が拡充...