<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第87回 概念フレームワーク(3)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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ベルリンの壁

ベルリンの壁が崩壊したのは、1989年11月9日の深夜と言われている。大勢の若者たちが壁によじ登って、ハンマーで壁を砕いている映像を何度も観た。11月9日に行われた東ドイツ政府の記者会見の中で、就任したばかりの報道官が、まだ閣議決定されていない「旅行許可に関する出国規制緩和」を、すでに発効されていると勘違いして発表してしまった。その報道を見て驚いた市民が東西ベルリンから壁に集まり、その規模は数万人に膨らんだ。そして国境検問所が大混乱になるなか、検問官は国境ゲートを開かざるを得なくなった。何万もの市民が国境を超えた。騒ぎはこれで収まらず、お祭り騒ぎになった市民たちがそれに乗じて、ハンマーやつるはしを持ち出して壁を壊し始めた。そして若者たちが壁を打ち壊すあの有名な映像が撮影された。

1989年は和暦では平成元年である。平成元年と言えば、経済に関わる人であれば、バブルの崩壊と、その後に繋がる失われた30年の始まりの年であると連想する方も多いと思う。日本の失われた30年とベルリンの壁の崩壊は、必ずしも無関係ではない。ベルリンの壁の崩壊をきっかけに、世界の冷戦構造は終焉を迎え、世界経済...