<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第91回 概念フレームワーク(7)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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パンドラの箱

パンドラの箱という言葉はビジネスシーンでもよく使われる言葉であるが、その由来はギリシャ神話の中にある。全知全能の神であるゼウスが、プロメテウスという男神に罰を与える目的で、粘土から人類最初の女性をつくり、パンドラと名付けた。そしてゼウスはパンドラに、絶対に開けてはいけないという条件をつけて1つの箱を託した。実は、その箱の中には、疫病や犯罪など、この世のありとあらゆる災いが詰まっていた。後にパンドラはプロメテウスの弟のエピメテウスの妻となったが、開けてはいけないとされた箱の中身が気になって仕方がない。パンドラは、自分の好奇心に逆らえず、ついにその箱を開けてしまう。すると箱の中からは災いが飛び出して、それ以降人類はさまざまな災いと戦わなければならなくなった。

このギリシャ神話の逸話から、ビジネスシーンでは、開けてはならない箱、すなわち触れてはならない話題のことを「パンドラの箱」と呼ぶ。ギリシャ神話では、パンドラの箱の中には災いが詰まっていたが、ビジネスシーンで使われるパンドラの箱の中に詰まっているものは、災いというよりもむしろ「やっかいなもの」と言った方がよい。いったん落ち着いた...