多店舗展開する小売業における新リース会計基準適用プロジェクトの勘所(前編)

有限責任 あずさ監査法人 アドバイザリー統轄事業部 パートナー 山本 勝一
 シニアマネジャー 今村 英祐

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1.新リース会計基準開発の経緯と今後の見込み

2018年から長い年月をかけてASBJ(企業会計基準委員会)において検討が進められてきた新リース会計基準の公開草案が、ついに本年5月2日に公表されました。多数の事業会社に大きな影響が生じることが見込まれることもあり、5年という過去に例を見ないほどの長期間、議論が続けられてきたわけですが、ようやく適用スケジュールが見えてきました。

本稿では過去の議論の内容の解説は行いませんが、現在、公開草案の内容に対して多くの意見が寄せられており、ASBJ内で協議が今後なされると思われます。

リースに関する会計基準(案)第56項で「本会計基準は20××年4月1日〔公表から2年程度経過した日を想定している〕以後開始する連結事業年度及び事業年度の期首から適用する」と提案されていることを考慮しますと、2024年3月前後に基準最終化がなされた場合、3月決算会社の適用年度は2027年3月期からになると思われ、一方、そのスケジュールから遅れて最終化された場合には2028年3月期からの強制適用となると思われます。

本稿では、2024年3月前後に基準が最終化され、3月決算会社の適用...