後発事象の制度と実務~日本の制度とIFRS~(日本編)

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 木内 仁志
 公認会計士 那須 伸裕

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1. はじめに

2023年6月、以下の開示がなされた。

2023年5月xx日に公表しました 2023年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)につきまして、新たに生じたリコールの届け出の決定などにより、品質関連費用に関する見積りに変更が生じました。その結果、xxx億円の品質関連費用の発生が見込まれます。
当該事象については、会社法監査における会計監査人の監査報告書日(2023年5月xx日)後に発生していることから、連結計算書類および計算書類の修正が必要となる修正後発事象に該当せず、2023年3月期の連結計算書類および計算書類には反映されません。
2023年6月下旬に提出予定の2023年3月期有価証券報告書(金融庁に提出)およびForm 20-F(米国証券取引委員会に提出)については、連結財務諸表の発行の承認日までに当該事象が発生しているため、修正後発事象として連結財務諸表に反映されます。

この開示が意味するところは、会社法の開示・監査後に判明した重要事象等について、国際財務報告基準(IFRS)に基づく金融商品取引法(金商法)の開示・監査においては当該事象(品質関連費用に関する見積りの変更)を決算数値に...