Reboot! コーポレートガバナンス2023 【前編】海外の評価は? 次の課題は?

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

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新たなガバナンス議論の始まり

2023年度、コロナ明けの日本のコーポレートガバナンスの議論は、眠りから醒めたかのように再活性化している。東証は1月、「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」の論点整理の中で“資本コストを意識した経営の推進のため、PBRが1以下である企業に対し現状認識や対策を求める”ことを発表した。そして4月に金融庁が発表した「コーポレートガバナンス・アクションプログラム」では、「資本コストを踏まえた収益性・成長性を意識した経営の促進」を掲げ、同時に法制度の課題として大量保有報告制度における“重要提案行為等”と“共同保有者”の範囲の明確化が課題として挙げられた。これは金融庁が、投資家が“協働エンゲージメントをしやすいように取り組む”ということだ。また同じタイミングで経産省でも「公平な買収のあり方に関する研究会」が開催されている。これらを総合すると、今向っているのは“PBR<1、つまり株主から預かった資本の価値を下げている経営者が、その改善を投資家から求められることを歓迎し、協働エンゲージメントの環境も整備し、その価値を高められると考える株主からの買収提案も厭わない…”...