Q&Aコーナー 気になる論点(347) 製造原価明細書(2)

‐わが国における開示状況とIASBでの議論‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

( 44頁)

 国際会計基準審議会(IASB)や米国財務会計基準審議会(FASB)は、最近、連結財務諸表で製造原価明細書と同様の情報開示を議論しています。わが国での製造原価明細書の開示は、どのような状況でしょうか。

わが国では、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(財務諸表等規則)によって、個別財務諸表で製造原価明細書を記載することとされています。ただし、連結財務諸表でセグメント情報を注記している場合、記載の必要はなく、製造原価明細書の開示は、上場企業の1割強のみです。

〈解説〉

製造原価明細書(1)‐開示規定

財務諸表等規則75条2項では、当期製品製造原価の内訳を記載した明細書(製造原価明細書)を損益計算書に添付しなければならないとしています。財務諸表等規則ガイドライン75‐2の1では、当期総製造原価を材料費、労務費、間接費(又は経費)に区分して、期首仕掛品原価に加え、これから期末仕掛品原価を控除する等により表示するとしています([図表1])。

[図表1]製造原価明細書

財務諸表等規則では、2014年3月改正において、75条2項に「ただし、連結財務諸表において、連結財務諸表規則第15条の2第...