[連載対談]キーパーソンに訊く重要テーマ 第6回(前編)「財務報告の現場から」

味の素株式会社 執行役常務 財務・IR担当 水谷 英一
青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科 教授 町田 祥弘

( 10頁)

Ⅰ.ここが訊きたい

近年、上場企業の財務報告の領域では、記述情報の開示の拡充が進められてきた。2023年3月期からは有価証券報告書において、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、指標及び目標を含むサステナビリティ情報の開示が求められることとなった。とくに、いわゆる人的資本の開示問題として、「人材育成方針」や「社内環境整備方針」について目標と実績の開示が注目を集めている。また、「従業員の状況」の欄では、従来の項目に加えて、多様性の観点から、女性活躍推進法に基づく「女性管理職比率」や「男性育児休業取得率」及び「男女間賃金格差」の開示が行われている。

一方、海外を見れば、EUにおいては2024年から、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に基づいて、レビュー等の保証を伴う新たなサステナビリティ開示が始まろうとしている。EUに拠点を有する一定規模以上の企業においても、2028年から同様の報告が求められることから、わが国企業においても他人事ではない。

開示の基準についても、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)から、2023年6月26日に、「IFRSサステナビリティ開示基...