Q&Aコーナー 気になる論点(351) 株主の観点からの会計処理(3)

‐IASBによる共通支配下の企業結合の検討‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

( 32頁)

 国際会計基準審議会(IASB)は、2023年11月開催のボード会議で、共通支配下の企業結合プロジェクトについて、今後の方向性を議論しています。IASBが2020年11月に公表したディスカッション・ペーパー(DP)「共通支配下の企業結合」では、非取得企業の資産・負債を公正価値で測定する取得法のほか、株主の観点では同じ経済的資源に投資されていることから、状況によっては、移転元の企業の簿価で測定する簿価法も提案していました。今後、このプロジェクトは、どうなるのでしょうか。

IASBでは、リサーチプロジェクトとしていた共通支配下の企業結合の会計処理の検討を、基準設定プロジェクトへの移行ではなく、中止することとしています。

〈解説〉

背景

IFRS第3号「企業結合」では、共通支配下の企業結合 を、その適用範囲から除外しています。適用可能なIFRSがない場合、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に基づき、移転先の企業(receiving company)は、共通支配下の企業結合について会計方針を設ける必要があります。

DPでは、適用可能なIFRSがないことが、実務のバラつきをもたらし...