<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第98回 概念フレームワーク(14)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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知らなかったでは済まされない

刑法第38条3項に「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。(後略)」という記載がある。これは、違法性の錯誤に関する規定と言われる。刑法第38条は、法を犯した人が、犯罪が故意なのか、過失なのかに関する条文で、その第1項に「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。(後略)」とある。ポイントは意思があったのか、なかったのかである。罪を犯したが、故意ではなかったということを証明するには、過失であったということを証明しなければならない。過失には2種類あり、1つは先に述べた違法性の錯誤であり、もう1つは事実の錯誤である。事例としては猟師が熊だと思って人を誤って撃ち殺した場合などが該当する。一方で、仮にその地区では熊を殺してはならないという法律があるにも拘らず、それを知らずに熊を撃ち殺してしまったという場合は、違法性の錯誤に該当し、刑法38条の3項によって違法性が成立する。その地区では熊を撃ち殺してはいけないという法律は猟師が知っておかなければならない「重要性がある」情報なのである。

「重要性」

IFRS会計基準の概念フレームワ...