東証上場会社の不正・不祥事に対する措置の最新実例とその傾向について 第1回  制度の概況と全体の傾向分析(1)

日本取引所自主規制法人 上場管理部調査役 杉野 普規
日本取引所自主規制法人 上場管理部調査役・弁護士 藤森 翔太

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はじめに

日本取引所自主規制法人(以下「当法人」という。)は、東証上場会社における不正・不祥事などに起因する不適正な開示が行われた場合に審査を行い、不正・不祥事の原因となった内部管理体制の改善等を求める措置の決定を行っている。上場会社における不正・不祥事は、コロナ禍、金利・為替動向など環境変化にも左右され、さまざまな要因や形態で発生している。

上場会社にとって、不正・不祥事を未然に防止すること、あるいは、早期に是正することは、企業価値の毀損を防ぐことにつながるため、経営にとって不変の重要な課題であるとともに、社会全体や市場全体にとっても極めて重要な課題であると考えられる。

本稿では、当法人が行った東証上場会社における不正・不祥事に対する措置審査の事例をもとに、その傾向を紹介することにより、上場会社はもちろんのこと、内部管理体制構築支援に携わる証券会社、弁護士、公認会計士、コンサルタントなどの上場会社関係者に対しても、不正・不祥事の未然防止や早期是正のために必要な体制構築のポイントをお伝えしていく。

本稿については、杉野を中心に東証上場会社の不正・不祥事に関する制度の概況と全体の傾向分析を著し、...