IASB公開草案 「企業結合‐開示、のれん及び減損」の概要と企業に与える影響

株式会社三井住友銀行 財務企画部 副部長 黒田 康平
株式会社三井住友銀行 財務企画部 グループ長 森 大

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国際会計基準審議会(以下、「IASB」という)は、企業買収に関して、投資家などに提供する情報の拡充を目的とした公開草案「企業結合‐開示、のれん及び減損」(以下、「本公開草案」という)を公表し、IFRS第3号「企業結合」(以下、「IFRS第3号」という)及びIAS第36号「資産の減損」(以下、「IAS第36号」という)に関連した修正を提案している。

この提案に至るまで、国際的にも大きな議論があり、改めてその歴史を振り返りつつ、今回の提案が企業に与える影響などを解説する。

なお、本稿は筆者の私見であり、筆者が所属する組織の見解を示すものではないことを、あらかじめ申し添える。

1.本公開草案に至る経緯

IASBは、IFRS第3号の適用後レビュー(Post-implementation Review)を実施し、利害関係者からのフィードバックを受け、2015年6月にフィードバック文書を公表するとともに、その対応として、(1)企業は企業結合に関するより良い情報(特に、企業結合後の業績に関する情報)を提供できているか、(2)のれんの減損テストの有効性の改善、(3)のれんの償却の再導入の要否などを重点的に調査...