<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第109回 概念フレームワーク(25)

―認識及び認識の中止(3)―

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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消し込み

「消し込み」という言葉をご存知だろうか。この言葉はいわゆる経理用語で、経理を担当したことのある人ならご存知かと思うが、経理とは関係のない一般の人には、その正確な意味がほとんど知られていない言葉である。

「消し込み」は大変重要な経理作業である。たとえば売掛金を回収したら、その売掛金は回収されたので、経理台帳から消えなくてはならない。現在のシステムであれば、代金回収と同時に自動的に売掛金が消えるようになっているのだろうが、昔は売掛金を消すという作業を人がやっていた。その作業のことを「消し込み」という。作業自体は簡単な作業だが、これが状況によっては大変な作業になることがある。具体的には売掛金として記録されている金額と、入金された金額が合わない場合などである。売掛金が全額回収された訳ではなく、部分的に回収された場合などにそういう事が起こる。部分回収ならまだ良いのだが、他の売掛金と一緒に現金が入金され、かつそれぞれが部分的な入金であったりすると、厄介な事になってくる。入金伝票を別々の入金伝票に分割して消し込みをするか、あるいは元々の売掛金の計上額を組み直して、入金額に合わせるようにするなど...