書評 安福健也編著『数字の「違和感」で見抜く不正の兆候』
公認会計士・税理士 荻窪輝明
会計不正の兆候を見抜く「魔法の杖」
本書は会計不正の兆候を「魔法の杖」を使って数字の「違和感」から見抜く方法を伝授する一冊である。筆者が言う「魔法の杖」とは、会計監査で使われる「分析的手続」と呼ばれる手法を指す。分析的手続自体は会計不正の兆候を発見するための新しいツールではないが、本書を読めば、「魔法の杖」である「分析的手続」を使って「何を」「どのように」分析すれば会計不正の兆候を発見できるのか、という新たな視点が加わり、実践的な理解に繋がる。
20のエピソードで会計不正を疑似体験
本書の魅力は、「分析的手続」の使い方を丁寧にガイドし、ユニークなケーススタディーを通じて、読者が会計不正の疑似体験を積むことができる点にある。20のエピソードが収録されており、様々な業種と決算期の企業を舞台に、上場後間もない企業から業界を代表する大手企業までの架空事例が紹介されている。各エピソードでは、異なる会計不正の手口が描かれており、読者は先頭から順番に読んでも、自分に関連するエピソードだけを読んでもよい構成になっている。
各エピソードの冒頭には、分析の異常値を示すグラフや登場人物の紹介があり、物語は会計不正の...
- 経営財務データベースで続きを読む
-
無料 2週間のお試しはこちら
すぐに使えるIDをメールでお送りします