会計知識録 第37回 経営多角化は企業価値を下げる?~コングロマリット・ディスカウントの原因を探る
公認会計士 溝口 聖規
はじめに
昨年8月に、北米や欧州をはじめ31か国・地域でコンビニ「クシュタール」「サークルK」など約1万6,700店を展開しているカナダの流通大手アリマンタシォン・クシュタールが、コンビニ、スーパーマーケットなどの流通事業を展開する国内大手企業であるセブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイHD)に買収提案を行いました。クシュタール以前にも、セブン&アイHDは、サード・ポイントやバリューアクト・キャピタルなどのアクティビストから株主提案を受けていました。彼らは、多様な事業を傘下に持つ複合企業であるセブン&アイHDの経営効率の低さを指摘し、不採算事業の売却や撤退、事業の選択と集中の構造改革を要求してきました。これに対して、セブン&アイHDは、2023年9月に百貨店子会社(そごう・西武)を売却し、イトーヨーカ堂については2026年2月末までに33店舗を閉鎖する方針を示すなどの対応をしています。セブン&アイHDのように、多角化の結果、経営が非効率となり企業価値が棄損した状態をコングロマリット・ディスカウントと言います。
なぜ経営多角化は企業価値の低下を招くのでしょうか? 今回は、コングロマリッ...
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