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判決から読み解く税務会計 第18回 同族会社の行為計算否認の事例

青山学院大学大学院 教授 小林 裕明

( 68頁)

今回は、同族会社の行為計算否認規定を取り上げます。この規定は、所有と経営が一致した同族会社を利用した専断的行為により、税額が「不当に減少」した場合に適用される否認規定として有名です。ただし、近年は個別否認規定の増加に伴い適用する場面が減少し、著名な訴訟事件で課税庁が敗訴するなど、その存在意義の低下が問われています。

そこで、規定の成立ち、趣旨、改正の経緯を振り返りながら、特徴的な課税事例を取り上げてこの規制が持つ意義について確認していきます。

1 同族会社の行為計算否認規定の意義、趣旨

(1)規制の趣旨、行為の類型

同族会社の行為計算否認規定(法法132①。他の税目では所法157①、相法64①等)は、...